お城の基礎知識

1.日本の城の歴史
2.お城の分類
3.お城の構成要素
4.石垣の積み方
5.縄張の分類
6.海外との相違点
7.城巡りの注意点
8.御城印とは

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1.日本の城の歴史

・弥生時代(環濠集落)
農耕の始まりにより各地で争いが起きた事から集落を柵や塀、深く掘った堀で囲み、物見櫓などが置かれた環濠集落が登場。これが、日本のお城の起源ともいわれている。
吉野ヶ里遺跡(佐賀県)【日本100名城に選出】、池上・曽根遺跡(大阪府)など

・飛鳥~奈良時代(古代山城)
中国・朝鮮など大陸からの侵攻に備えるために西日本一帯に古代山城が築かれるようになる。あくまで防衛線の城壁のため戦の時のみに使用するもので平時は麓で生活していた。
大野城(福岡県)【朝鮮式山城】、鬼ノ城(岡山県)【神籠石系山城】など

・奈良~平安時代(城柵)
東北地方の蝦夷(えみし)を支配するため、築かれたものが城柵。前述の古代山城は結局大陸からの侵略が無いまま時代が過ぎ、同じく城柵も蝦夷(えみし)の帰順により防衛や侵略の拠点としての必要性が薄れていった。
多賀城(宮城県)、秋田城(秋田県)など

・平安末期~室町時代(中世山城)
武家社会が発展していき、武士同士の武力衝突が発生するようになり、平時の居住地の防護・戦時に使用する防衛設備としてお城が発達。楠木正成による「千早城籠城戦」によって、中世山城が普及。また、この時代のお城は土で築かれているものが多くほとんどは現存せず。
千早城(大阪府)、一乗谷城(福井県)など

・戦国~安土桃山時代(近世山城)
山城は山城でも比較的緩やかな山に築かれるケースが増え、居住性を重視したお城も登場。この頃に本格的な天守を持ち楽市・楽座の城下町が設けられた安土城が築城。安土城の誕生以降、天守・石垣・城下町を持つお城が普及。
安土城(滋賀県)、備中松山城(岡山県)など

・戦国時代末期~江戸時代(平山城・平城)
戦国時代に入るとお城は軍事防衛の拠点としてだけでなく、行政の拠点としても使用されるようになる。お城を中心として町民たちが生活する城下町が周囲に掲載され経済の中心として発達。そのため、お城の築かれる場所が山から平野に移り、「平山城」「平城」が主流に。
大阪城(大阪府)【平山城】、江戸城(東京都)【平城】など

お城の分類

・地形による分類
「山城」
中世から戦国時代のお城によく見られる。山頂や山腹などの地形を利用して山に築かれたお城。戦の際に防御しやすく防戦・籠城戦に有用であり軍事的側面が強い。
岐阜城(岐阜県)、岩村城(岐阜県)など

「平山城」
戦国時代中期のお城によく見られる。小山や平地を利用して作られた、山城と平城の要素を併せ持つお城。軍事面、政治・経済的面の両方を併せ持つ。
姫路城(兵庫県)、津山城(岡山県)など

「平城」
近世のお城に多くみられる。平坦な平地に築かれたお城。防御力を高めるため水堀や石垣などを設置している。政治・経済の中心となり城下町が発達。
松本城(長野県)、名古屋城(愛知県)など

・その他の分類
「水城」
平城のうち主に海や河川、湖沼などを水上交通や防御に利用しているお城。中でも海を利用しているものを「海城」と分けて表現することもある。「海城」は瀬戸内海周辺に多い。
高松城(香川県)、中津城(大分県)など

「古代山城」
主に飛鳥・奈良時代に山に築かれた防衛施設。「朝鮮式山城」「中国式山城」「神籠石系山城」の総称。

・古代山城の分類
「朝鮮式山城」
白村江の戦いに敗れた倭国が国土防衛のために建築したお城。
大野城(福岡県)、鞠智城(佐賀県)など

「神籠石系山城」
石が谷などを取り囲むように造られた石垣に似た構造物。『日本書紀』『続日本紀』などに記載がない、遺構のみのものを指す。城の防衛設備の他、神を祀る施設という説もある。
鬼ノ城(岡山県)、鹿毛馬神籠石(福岡県)など

・蝦夷(えぞ)・琉球のお城
「チャシ」
北海道にあるアイヌ民族が築いた史跡。「チャシ」はアイヌ語で「柵(で囲った場所)」を指す言葉。正確な実態は不明な点が多いが砦や館などの役割があったと考えられている。また軍事施設の他、宗教的行事を行う祭場として利用していたとされている。
根室半島チャシ跡群など

根室半島チャシ跡群(北海道)

「グスク」
沖縄諸島や奄美諸島に残されている史跡。「グ」は石、「スク」は囲った場所を意味する。グスクは軍事拠点とする城郭であった説のほかに信仰の聖域であったという説もある。また集落が発展していく過程で防御壁などを築くようになりグスクとなったとも言われている。
首里城、今帰仁城、中城城(いずれも沖縄県)、赤木名城(鹿児島県)など
今帰仁城(沖縄県)

お城の構成要素

「天守(閣)」
お城の本丸に位置し中核となる施設。あくまで城内設備の一種であり、その上安土桃山時代以降に広まったため、天守を持たないお城も多い。

宇和島城(愛媛県)

・現存天守
お城が建てられた当時の姿のまま残っている天守。現存するのは12か所のみ、そのうち5つが国宝に指定されている。
弘前城(青森県)、犬山城(愛知県)など

・復元天守
様々な要因で無くなってしまった天守を、文献や資料を基に復元した天守。当時の工法のまま木造で忠実に再現した「木造復元天守」、鉄筋コンクリートなどを使い外観を当時の形で再現した「外観復元天守」に分けられる。
新発田城(新潟県)、大洲城(愛知県)など【木造復元天守】
名古屋城(愛知県)、広島城(愛知県)など【外観復元天守】

・復興天守
お城に天守が存在したらしいが、詳細な資料が見つからず、他の天守を参考に造られた天守。
大坂城(大阪府)、岸和田城(大阪府)など

・模擬天守
元々天守が存在しないお城に、後世になってから造られた天守。
伊賀上野城(三重県)、郡上八幡城(岐阜県)など

「石垣」
敵の侵入を防ぐために石を積み上げて出来た壁。石垣の分類はこちら

「土塁」
土井・土手ともいう。堀や曲輪を造る際に出る土砂を城内や曲輪内に盛り上げたもの。土塁を補強するため、石垣と併用して使われたケースもある。
一乗谷城(福井県)

「堀」
城への侵入を防ぐため城の周囲に掘られた巨大な溝。水が張ってあるものを「水堀」、水がないものを「空堀」という。「空堀」は水を貯めることが難しかった山城にみられる。
空堀:大坂城(大阪府)
水堀:赤穂城(兵庫県)

「橋」
城内と城外や曲輪と曲輪の間などをつなぐ道。主に木で作られた「木橋」と土で作られた「土橋」に分類できる。

「櫓」
遠くの敵を監視する物見台が発展してできた。外敵を見張る役割から、武器・食料などを貯める蔵としての役割も持つ。

「狭間(さま)」
塀や建物の横壁に設置された小窓のような穴で矢や鉄砲などをここから放つ。使用する武器によって穴の形が異なる。(「矢狭間」は長方形、「鉄砲狭間」は丸や三角、正方形など)構造的には内側が広く、外側が狭くなっている。
赤穂城(兵庫県)

石垣の積み方

・加工法の違い
「野面積(のづらづみ)」
石垣が登場した初期の技法。殆ど加工されていない自然のままの石を使う積み方。自然のままの石を使っている都合上、石同士の間に隙間が生じてしまうため、その隙間に「間詰石」という小石を詰めるのが一般的。
「小谷城」(滋賀県)、「竹田城」(兵庫県)など

浜松城石垣(静岡県)

「打込接(うちこみはぎ)」
16世紀後半に生まれた技法。石を加工することで石同士の接合面の隙間を減らす積み方。加工に手間がかかる分、野面積より高く急な石垣を作ることが可能になった。近世のお城では最も主流。
「津山城」(岡山県)、「熊本城」(熊本県)など
丸亀城本丸石垣(香川県)
佐賀城天守台(佐賀県)

「切込接(きりこみはぎ)」
関ケ原の戦い以降に誕生した技法。加工技術の発展により石同士が、「打込接」よりもさらにぴったり合い隙間が無くなるよう加工してできた積み方。隙間が無く排水出来ないため排水口が設けられる。コストや技術の面で難がある。
「江戸城」(東京都)、「駿府城」(静岡県)など
江戸城天守台(東京都)
高松城埋門(香川県)

・積み方の違い
「布積(ぬのづみ)」
高さが一定に揃った石材を用い、横の目地(継ぎ目)を通す積み方。高さを揃える都合上、石を同じ形に加工する手間がかかるが、凹凸が少ないので、技術を必要とせず比較的簡単に積み上げることが出来る。
「江戸城天守台」(東京都)、「大阪城天守台」(大阪府)など
福知山城石垣(京都府)

「乱積(らんづみ)」
大小様々な不揃いの石材を用いるため、横の目地(継ぎ目)が通っていない積み方。様々な多角形の石を同時に用いることが出来るが、バランスを取るのが難しく、積み上げるためには高い技術が必要。
「松坂城」(三重県)など
竹田城三の丸(兵庫県)

・変則的な積み方
「亀甲積(きっこうづみ)」(蜂ノ巣積【はちのすづみ】ともいう)
六角形に切った石を亀の甲羅のように隙間なく積み上げる。加工に手間がかかるため、コストや技術の面で難がある。全体を亀甲積にするのではなく一部のみに施した例も見られる。
「江戸城大手門」(東京都)、「二条城」(京都府)など

「谷積(たにづみ)」(落積【おとしづみ】ともいう)
江戸時代末期に誕生。石を斜めに積み上げる方法。石材の重みによって石が下に下がるため積みやすい。
「駿府城」(静岡県)など

「算木積(さんきづみ)」
石垣の崩落を防ぐため、主に角(隅角部)に使われている技法。長方形の石財を短辺と長辺を互い違いに組み上げていく積み方。長辺が短辺の隣にある「隅脇石(すみわきいし)」を上下でしっかりと挟むことで強度を高める。
松坂城石垣(三重県)

縄張の分類

「縄張(なわばり)」
本丸や曲輪をどのように配置するかなどを決めるお城の設計計画のこと。築城の際に縄を用いて長さを測ったことが由来。

・縄張の構成
「輪郭式(りんかくしき)」
囲郭式ともいう。平城に多くみられる。本丸を中心に周囲を二の丸・三の丸で円形に囲んで配置した構成。本丸の守りが高くなる利点があるが、二の丸・三の丸は手薄になるという欠点もある。
大阪城(大阪府)、山形城(山形県)など

「連郭式(れんかくしき)」
山城に多く見られる。本丸に二の丸・三の丸をほぼ直線的に配置する構成。山城の中でも尾根などの敷地を広くとることのできない場所で使用された。
仙台城(宮城県)、水戸城(茨城県)など

「梯郭式(ていかくしき)」
平山城に多くみられる。本丸の虎口に二の丸、二の丸の虎口に三の丸と、梯子状に連ねた構成。本丸の後ろには曲輪が無いため、谷や川といった自然の地形で守れる場所に建てられる。
広島城(広島県)、会津若松城(福島県)など

「並郭式(へいかくしき)」
本丸と二の丸などを並行に配置し、その周りを三の丸などの別の曲輪で取り囲む構成。
島原城(熊本県)、大分城(大分県)など

「渦郭式(かかくしき)」
螺旋式ともいう。本丸を中心として、二の丸・三の丸を螺旋状に配置する構成。
姫路城(兵庫県)、江戸城(東京都)など

「稜堡式(りょうほしき)」
星型要塞ともいう。15世紀頃、イタリアで導入された西洋式の城郭。空から見ると塀・曲輪などが星のような形状に見える、中心部に建物を配置する構成。
五稜郭(北海道)、龍岡城(長野県)など

「併用式(へいようしき)」
上記の縄張を組み合わせて曲輪が配置されている構成。
松本城【輪郭式+梯郭式】(長野県)など

・縄張を構成する要素
「曲輪・郭(くるわ)」
城の中において、本丸・二の丸などといった用途・目的によって小区画に分けられた場所のこと。細長く帯状に城を囲む「帯曲輪」は主に山城の山腹部に見られる。

「虎口(こぐち)」
城の出入り口に当たり、攻撃・守備双方の拠点となった場所。敵の直進を防ぐ「一文字虎口」や、門の周囲を四角く囲み2つの出入り口通る仕組みである「桝形虎口」など様々な種類がある。

「馬出(うまだし)」
敵の攻撃から虎口を防衛するため虎口の前に配備された土塁・曲輪。初期は直線の土塁を築いた「安土馬出」と呼ばれるもの、次第に様々な形状が考案され半円形の「丸馬出」や四角形の「角馬出」などが生まれた。

「横矢(掛かり)【よこや(がかり)】」
虎口に多く採用された、近づく敵を攻撃する防衛設備。側面から攻撃するため、攻撃的な死角が少ない。城塁の一部を屈曲させることで攻撃しやすく、塁の安定性を高める効果もある。

海外との相違点

・防衛設備の違い
西洋では高い城壁で囲み敵の侵入を防ぐ造りのものが多い。対して日本では城壁の周りをお堀で囲うように建てられているものが多い。日本に高い城壁がないのは、地震や水害などの天災が多いためと言われている。

アビラの城壁(スペイン)

・素材の違い
西洋の多くのお城は石を積み上げて建築されている。対して日本は石垣などに石材は使われているが、木と土を主に使用して築かれている。(そのため現存しないものも多い)石材に加工しやすい堆積岩が西洋には多く、日本には少なかった事が理由と考えられる。

・城下町の位置
西洋では町全体を城壁で取り囲みお城が形成される城塞都市を形成、町全体が一つの城として機能している。そのため、戦争の際には領民も兵士たちと共に戦う事となり、虐殺の被害に遭う事や奴隷にされる事も度々あった。対して日本はお城と城下町は独立している場合が多い。
ドゥブロヴニク(クロアチア)

城巡りの注意点

・歩きやすい靴を用意する
山にある山城、市街地にある平城・平山城問わず、天守まで登るとなるとかなりの距離を歩くことになります。そのため、城巡りの際には「歩きやすい靴」を履いて行きましょう。また、山城の場合は道が整備されていない(されていても道幅が狭かったり手すりが無かったりする場合がございます)ケースもあるため、トレッキングシューズを履いていくことを奨励します。

・季節に合わせた服装で行く
市街地にあるお城などに行く際はその季節に合わせた服装で行きましょう。冬場は防寒具を着込み、夏場は薄手の服を着ていきましょう。また、屋外は日陰がほとんど無く城内にも冷房が無い場合が多いため、夏に行く場合は熱中症・脱水症状対策の為に水分補給が出来るものを用意しましょう。

・山城に行くに際の服装
山城へ行く際は木の枝などで擦り傷などが気づいたら出来ているという事もあります。また、蚊やマムシなどもいます。そのため、長袖長ズボンで万全の準備をして行きましょう。帽子や杖なども忘れずに。荷物を入れるものは、バッグより何かあった際に両手が仕えるリュックサックが良いでしょう。(山城へ行くのは山登りをするのと同じなのでトレッキング用の恰好をしていくのが望ましいです。)

・事前情報を仕入れる
もちろん、何も知らない状態城巡りをするのも悪くはないですが、事前にお城の事を調べておくと城巡りをより楽しめます。また市街地にある公園化されたお城の場合は現地でパンフレットやガイドブックが置いてあるところもあるのでそちらも活用しましょう。

・その他マナー
当然の事ではありますが、ゴミなどは捨てずに持ち帰りましょう。また、山城を巡る際は落ちているものを持ち帰ることはやめましょう。落ちている石や瓦礫が、昔の瓦や石垣・建物の一部の可能性があるためです。

御城印とは

お城を訪れた際に登城記念として頂ける証。和紙に城名や家紋が描かれており、お城ごとにデザインは様々。場所によっては現地だけでなく、周辺の観光案内所や売店でも購入可能。
神社・お寺の「御朱印」とは別物なので注意。